寒空の下で

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リュウタは僕の誘いを断るも、なおも寒そうな仕草をする。 僕はそんなリュウタを放っておく事ができず、リュウタの手を握った。 その手は思っていた以上に冷え切っていた。 僕の手はというと、ポケットに手を入れていた為それほど冷たくない。 僕の行動にリュウタは驚いて僕を見る。   「平気だよ。こんなに人がいるんだから」   「でも……」   「それとも、手を繋ぐよりキスの方がよかったかな?」   顔を近づけてそう言ってみせればリュウタは俯いて顔を真っ赤にさせた。 予想通りの可愛い反応に僕は和む。   「カメちゃんのバカ」   そう言い僕の手を握り返す。 こうでも言わないと許してくれないリュウタが愛らしく、抱きしめたくなる。 しかし、ここでそれをしてしまったらリュウタは怒るだろう。 そして手も握ってくれなくなる。 それはさすがに嫌なので、自分を押さえる事にした。   「カメちゃんの手、あったかい」   そう言って握っている手を見つめている。   「リュウタが冷たすぎるんだよ」   「そうかな?」   首を傾げるリュウタに僕は、そうだよと告げる。 こんなに冷たくなるまで何もしてあげなかった僕も悪いだろうけど。 でもそのおかげでこうやって外で手を繋げている。 そう思えば、これでよかったのかもしれない。   「それにしても寒いね……」   僕はそう呟いた。 すると視界に白いものが入った。 空を見上げればその白いものは無数に振り続けている。   「雪だ!」   僕が心の中で思ったのと同時にリュウタは声に出した。 目を輝かせながら空を見上げる。 その姿に僕は思わず微笑む。 子供のようにはしゃぎだすリュウタに、まだまだ子供だなとどこかで安心している自分がいた。 いつまでもリュウタとこうして過ごしたい。 いつまでも……。           The end
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