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「隙ありっ!」
コーヒーを飲んでいるカメちゃんの背後から僕は手を伸ばして眼鏡を取る。
慌ててコーヒーを置き、振り返るカメちゃん。
眼鏡を取ったその姿はまるで別人のように見えた。
っていうか、キザな良太郎?
「カメちゃん……眼鏡取ったらなんか物足りないね」
そう言って僕は眼鏡をかける。
一瞬くらっとしたが自然と慣れていく。
「物足りないって言うくらいなら返してくれる?」
カメちゃんは眼鏡を取り返そうと手を伸ばすが、僕はそれをかわす。
「やーだよ!それよりカメちゃん。これぼやけて見える」
「当たり前でしょ。リュウタは視力良いんだから」
「でも不思議じゃない?こんなので見えないものが見えるようになるんでしょ?」
僕はカメちゃんの表情を見ようと顔を近づける。
「カメちゃんの顔、よく見えない……」
「僕もリュウタの顔がよく見えないよ」
そうして、ちゅっとキスをしてきたかと思えば眼鏡を取られた。
「あ、僕の……」
「これはリュウタのじゃない。僕の眼鏡」
そう言って眼鏡をかける。
いつも通りに戻るカメちゃん。
取られたのはちょっと悔しいけど、さっきまで見えなかったカメちゃんの顔が今ではよく見える。
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