94人が本棚に入れています
本棚に追加
「みんな、おはよう」
朝、デンライナーに来た良太郎は挨拶をしながら皆のいる食堂車に入る。
すると、良太郎が来た事に誰よりも早く気づいたリュウタロスが良太郎の顔を確認する間もないほど素早く駆け寄った。
「良太郎~遅いよ!」
顔を合わせるなり文句を言われた。
良太郎本人としては、いつもより早く来たつもりだった。
何故こんなことを言われているのかわからないでいると、視界にモモタロスが入った。
いつもならすぐに声をかけてくるのに、今日は一言も喋っていない。
動いてすらいない。
どうやらまだ眠っているようだ。
良太郎はウラタロスへと視線を向ければモモタロスの事について聞いた。
「ねぇ、ウラタロス。モモタロス、どうかしたの?」
「あぁ、先輩?」
いつものように身体をくねらせながらモモタロスを一度見ると、すぐに良太郎へと視線を戻す。
「昨日オーナーが怖い話をしてくれてさ、そしたら先輩本気で怖がっちゃって全然眠れなかったらしいよ」
「それで、ちょっと前に眠ったところなんですよー」
ウラタロスに付け足すようにナオミが明るい口調で言った。
そうなんだ…と思いながら、良太郎はモモタロスを改めて見る。
すると、良太郎の隣にいるリュウタロスがいかにも馬鹿にしたようにモモタロスを笑った。
「バッカみたい。あのくらいで怯えるなんてさ」
その言葉で良太郎は先日行われた町内会主催の肝試し大会の事を思い出した。
その時のモモタロスは怖がる素振りを全く見せていなかった。
なのに何故眠れなくなるほど怖い思いをしているのだろうかと、良太郎は疑問に思った。
「あれ?でもモモタロスってそういう怖い話とか苦手だったっけ?」
良太郎の問いにウラタロスはそういえば言ってなかったねと続けた。
「怖い話といっても、犬の霊の話だから」
その一言に良太郎は納得した。
最初のコメントを投稿しよう!