冷静

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「ちょっと待って」   ウラタロスの呼び止めに良太郎は振り返る。 ウラタロスは先程と同じ場所から一歩も動いていなかった。   「どうかしたの?」   「どうもこうも…これ」   ウラタロスは右手を良太郎に見せた。 そこにはウラタロスの腕をしっかりと掴んで離さないモモタロスの手があった。   「…全然気づかなかったよ」   ウラタロスに言われて初めてその事に気づく。 どうしようか考えている良太郎にナオミは何の迷いもなく告げた。   「それじゃぁ、ウラちゃんはモモタロちゃんが目を覚ますまで一緒に居ればいいんじゃないですか?」   あっさり言われた言葉にウラタロスは呆然とする。 しかし、良太郎はナオミの言葉に頷く。 キンタロスやリュウタロスもそれに同意した。   「え、ちょっと待ってよ」   「じゃぁ、ウラタロス。後はよろしくね」   「りょ、良太郎?」   ウラタロスはその場に残され、皆は何の気もなしに食堂車を後にした。 思わず溜め息を吐くウラタロス。 そしてしばらく起きそうにないモモタロスの向かい側に座ればじっと見つめる。   「なんで僕の腕を掴んだまま寝ちゃうかな…」   モモタロスとウラタロスしかいない車両。 自然とウラタロスは目の前にいる相手の事を考えてしまう。 他の誰かの手を掴んだまま寝られるより、自分の手を握ったまま寝られる方が嬉しい。 しかし二人きりにされてしまえばそれ以上の事を考え、望んでしまう。   「先輩…」   ウラタロスが呟いても、話かけても、モモタロスの耳に入ることはない。 それでも、言わずにはいられなかった。   「僕は先輩が…」           To be continued?
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