子供

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    「お、静かになった。」   近づいてきた化け物が、また子供をつまみ上げる。   その途端に、子供にまたわきあがる  生存本能、恐怖。   「ゃ、やあぁーっ、やあーっ!」   力の限りの叫び。   「んだよ、まーたうるさくなった。」   その化け物の声は、なぜか子供にはっきり聞こえたし、理解できた。   そしてまた次の瞬間、   浮遊感と痛さの衝撃。      ――ここで子供は理解する。       (うるさいから、投げられたんだ。)     なら、声は出さない。   黙る、黙る。     生存本能からか、生き残るための方法、それだけが頭に浮かぶ。   子供は静かになった。   再びつまみ上げられたが、声を出さない。   恐怖で、身体は震えてはいたが。     「……へえ、特異点、だな。」   手は出さず、見ていた別の化け物が言う。   「とくイ点、特異てん」   「人間の特異点!」   化け物達がざわめく。   「使えそうだな」   「あいつなら、上手く使うだろう。」   「持ってくか」   「ああ。」     子供は化け物達に連れていかれる。 おとなしく。   痛いのはもう嫌だったから。 どうしたら良いのかも全く分からない。            そうして子供は化け物…イマジン達の世界で生き延びる事になる。   子供というものの、生きるための順応力は凄い。   また、特異点であったのも関係するのか…     その後子供は、実に「ねじれた」存在へと成長する。   人なのか、イマジンなのか……。   ただ特異点なのは、そのままで。     ……唯一の家族の母親、そして自分が何者であったのか、それすらも忘れて……。    
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