わたしと遅い姉

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わたしが日の照った街を歩くのは珍しい事だった。 「ここがアフレコスタジオです。」 担当さんが案内してくれたのは良く聞き覚えのあるアニメスタジオだった。 「ここの会社が作るんですか?」 「えぇ、先生はアニメ好きでらっしゃるからご存知だと思いますが、今回は作画に重点を置いた会社選びをさせてもらいました。」 担当はもっともらしく言うが彼にそこまで権限があるとは思えなかった。 と言うか正直問題は作画よりストーリーにある。 周りはファンタジー作品と思っているが実際はエッセイ、姉の事もある、ストーリーの改変は最小限にしてほしい。 「おはようございます。」 奥から聞き覚えのある声がする。 そしてアニメビデオの映像特典で何度か見た事のある姿。 「えっーと、取材に来たファッションモデルさんですか?」 「亜美さん、違う違う。こちら作者の早野 美香音(みかね)さん。」 「えっ?この方が?綺麗な方ですね。はじめまして早野さん。」 「…あっ初めまして、植草 亜美さんですね?」 呼ばれ慣れない名前で呼ばれると反応が鈍くなる。以後気を付けなくては。 「わぁ、私の事ご存知なんですか?嬉しいな!」 眩しいまでに屈託の無い笑顔。アイドル声優と呼ばれる事だけはある。 「先生はアニメに詳しいからな、先生この娘の声優初仕事なんて分かります?」 「ドラマCD微笑の皇女、9話の生徒H、それ以前ならデザートランナー2話のガヤでしょうか。」 有名声優だし、インターネットを駆使すれば誰でも分かる情報だ。 「ほら詳しいだろ?」 「すごい…。」 「ところで、植草さんは何役で出るんですか?」 植草はそうでした、と一呼吸おいて言った。 「ウェテシア役です。」 姉の役か、まあまあ悪くない配役だ。 「とにかくスタジオに入りませんか?」 「あっすいません。」 植草に促されスタジオに入る。 アニメを見ている立場として不思議な感じだ。
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