姉とわたし

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言うべきが言わざるべきかそれが問題だ。 ハムレットを気取る気はないけどわたしにとっては由々しき問題になる思う。 姉にはイラストレーターと言っているけど、ここ最近漫画家としての人気が出てしまったのだ。 今まで、四百年くらい生きてきた体験を少し脚色して漫画を描いたから自費出版でもしようかと思っていたのだけど、珍しく部屋まで上がってきた担当が食い付いた。 「ストーリーがリアルで面白いですね。」 その担当の目は確かだった、実体験なんだから当然だけど。 原稿を渡すと言うと、その出版社の月刊誌ですぐに連載が始まりたちまち人気作品。ネタはまだ腐るほどあるし、磐石のうえに磐石で逆に不安になる。 そしてこの度、単行本発売と同時にアニメ化することになった。 これが問題なのだ。 わたし自身の体験なのだ姉も半分レギュラーで出ている訳で、ストーリーを見られたら流石にばれる。 姉がわたしに悪印象を持っているのは知っている。その上、自分の過去を流出させたと知ったら、血は出ないけど血を見る事になるだろう。 姉もわたしもテレビゲームや、テレビアニメが大好きだ。 バンパイアと言うのは半永久的に生きる事ができる訳で、その時代にある娯楽を楽しまなければ退屈で生きていけない。 現代社会は退屈なんて言う暇もない。 アニメ、漫画の氾濫はもとより動画共有サイトとか兎角、退屈嫌いのバンパイアには住みよい。 実際、姉と話し合って日本に転居をきめたのはこれが決め手だった。 そんな訳で、わたし原作のアニメは姉に見られる可能性が非常に高い。 先に単行本を読まれてもそれはそれでアウト。 言っても言わなくても酷い目には会う。 どちらの方が被害が少ないか、それが問題だ。
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