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理由なんてない。
午前零時。
ただ突然死にたくなった。
愛しい人を目の前に、六幻を使い手首を深く切り裂く。
刹那
愛しい人の叫び声。
切り裂かれた皮膚からは真紅が溢れ出す。
ぽたり
ぽたり
ぽたり
愛しい人の涙と真紅色の雫が地面に零れ落ちる。
そして
意識が黒の世界に堕ちていく。
ズキンッと手首から走る痛みに意識が戻る。
ゆっくりと目を開けると、いつもの世界。
また、死なないで、世界に戻ってきた。
「…なんで。なんでまだ…」
死ねないんだ。
ゆっくりと体を起こし、痛む手首に目をやる。
其処には、丁寧に包帯が巻かれていた。
きっと、彼が巻いてくれたのだろう。
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