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佐田貞雄は今年で二十歳を迎える大学生だ。
「十代もあと1ヶ月か。何かめんどくさいなぁ」
と口にする貞雄は、めんどくさがりの性格が災いして、今日も髪の毛はボサボサ、服はヨレヨレ。
「もぅ。またそんなこと言って、しっかりしなさい。母さん悲しいわ」
と、隣で貞雄の母さんになりきっているのは友達の横井翔(ショウ)だ。2人は今、大学のキャンパスの広場のベンチに座っている。
「なぁ。何で俺達はもっとこう、パッとしないのかね」
貞雄は座るというより、寝るに近いほど腰をずらし、ぼんやり空を見ながら、そんなことをつぶやいた。
しかし、翔はたいして面白くもない母親の物まねに必死で、ちゃんと話しを聞いていなかった。
この2人は気が合うから、一緒にいるのではない。グループから余ってしまって、他に行くところがなく2人でいるのだ。
「翔、次の講義始まるから、そろそろ行くか」
だるそうに立ち上がり、広場を進んでいく貞雄。
「おい、何してんだ。早く来いよ」
貞雄が振り返りながら、そう言った。しかし、翔の耳にその言葉は届かない。
なぜなら翔は貞雄のチャックが全開である事を本人に言うかどうか、真剣に悩んでいたからだ。
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