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「うわっ。チャック開いてる。いつからだろう?」照れ隠しの独り言をつぶやきながら、貞雄はチャックをしめた。
翔は何となく話題を変えた。
「もうすぐ連休になるけど、貞雄はどうすんの?」
「ああ俺、実家から帰ってこいって言われてんだ」
「そうか。いつこっちに帰ってくんの?一緒にどっか行かね?」
「2、3日で帰ってくるから、全然行ける」
かくして、話題の転換に成功した2人。ついでに、ゴールデンウイークの予定も決まったのだから一石二鳥だ。
周りはバイトだの、サークルだのと忙しそうなのに、2人は常に暇そのもの。
講義をサボることもなく、平凡に日々を過ごしていった。
退屈しかない日々は妙に長く感じるが、振り返ってみるとすごく短い。それは、これといった中身がないからだった。
気付けばもうすぐ、ゴールデンウイーク。
貞雄は数カ月ぶりの帰省で実家に向かっている。もちろん新幹線や飛行機は使わない。安い夜行バスで帰るのだ。
いつもならバスに乗ればすぐに眠ってしまう貞雄。だが、今回はそうはいかなかった。
不思議に思うことがあったのだ。
いつもは夏休みのお盆と、冬休みの正月に帰るだけなのに……。何で今回は呼ばれたんだろう?まさか親父が何か……病気か、それとも離婚か?
本当にわからない。
10分程悩み、貞雄は眠ってしまった。
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