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そうしてついにたどり着いた、二人で楽しむという時間。
着替える時に見せた、あの恥じらいはどこへいってしまったのだろう、と気になってしまうくらいに、こいつははしゃいでいる。
うむ。まぁ悪い気はしないが。
「…? どうしたの、ボーッとして」
「いや、恥ずかしくなくなったのかなぁと」
率直に言ってみた。
「…恥ずかしいに決まってるじゃん」
そう言いつつ、少し頬を膨らませる。
「その割には楽しそうだし、なによりあたふたしなくなってるようだが」
「君と一緒だから我慢してるの…」
あぁ、なるほど…ん、俺以外だったら我慢出来ないってことか。
「それって、俺なんて眼中にないっていうあれですか?」
なんでこんなことを口走ってんだ俺はっ!しかも敬語とかっ!
「ち、違うよ!そういうわけじゃ…!」
そういうわけじゃない、とすると…
「…」
「…」
二人して黙り込んでしまう。もっと楽しいはずだったのに、気まずい空気が漂う。それより、これはある意味告白なのだろうか。勘違いだったら恥ずかしいが、告白とも受け取れるあれだったな。
…は?こいつが俺のことを?
今まで散々からかってきて、
今までただの隣に住んでいる幼なじみとして扱ってきて、
引っ込み思案で、恥ずかしがり屋で、少し抜けてて…
お互いの間にそんな恋愛感情とかは、ないって思ってたが…
まぁ、勘違いかもしれないがなっ!
「…とりあえず泳ぐぞ!」
照れ隠しかどうかは自分でも分からない。ただ、この場にいるのが気まずかっただけかもしれない。
ただ、顔がにやけてしまってしょうがないのだ。
まさか、自分でも気付いていなかった感情を、こいつに教えられるとは。
少し泳いでから、あいつの方を見つめる。
「俺、おまえが好きだ。友人としてじゃなく、な」
今なら、そうはっきりと言える。返事はどうであれ、自分の気持ちに素直にしようとした結果がこれなのだ。
「…うん、私も!」
そう、聞こえた。
これからは友人でも、幼なじみでもなく、恋人として俺たちは歩んでいく。
こんな凸凹コンビが恋人とは…と笑われるかもしれない。
でも、互いを知り尽くしてる俺たちなら、うまくやっていけるだろう。
海にきてよかった、と小さく呟いた。
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