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「分かった、急に脱がせたことは謝る。だから泣くな」
女の涙ほど強いものはないとはよく言ったものだ。誰が言ったのだろう。…ゲーテ?
「…うん」
とりあえず泣くのはやめてくれた。だがこのままではやつの格好はフラダンスの衣装みたいでなんか情けない。フラダンスやってる人がいたら申し訳ない。
「後ろ向いててやるから下も脱げ。さっさと泳ぎに行きたいんだ俺は」
そう告げてくるっと180゚回転する。
「はぁ…分かった。こっち向いていいって言うまで絶対見ちゃダメだからね」
ようやく腹を据えたらしい。長き闘いに終止符が打たれた。
待つこと1分あまり。
「いいよ」
うし、ようやくオッケーが出たか。どれどれ。
「…」
「…なんで黙るのかな」
いや、すみません。正直さっきの突っ張りよりも不意討ちです。
元々大きくはない身の丈ながら、出るとこは出てるっていうかなんていうか…すみません、ちょっとエロいっす。
「…まぁとりあえずパラソルたてるぞ。手伝え」
あくまで平常心を保っているかのように見せるためにそう提案する。
「うん…やっぱりちょっと恥ずかしい…」
俺のほうがいろいろと恥ずかしいとは口が裂けても言えない。
とりあえずパラソルもたてたし、泳ぎに行くことにした。
「え、お財布どうしよう」
「え、なんで財布持ってるの?」
海に来たら少し小銭を海パンのポケットか小銭入れに分けておいて、財布自体は預けておかないか…?
「…まぁいい、じゃあちょっと泳いでくるから待っててくれ」
せっかく二人で海に来ているのに、一人で泳ぐとは淋しいかぎりだが、致し方ない。
「ん、ごめんね…」
返事を聞いて俺は海へと走りだした。
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