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言っとくが、俺は泳ぐのが大好きだ。
自分の体が水面に浮かび、それを腕と足で裂いて進んでいく感じとか正直たまらない。
まぁ普通よりも少し泳ぎが得意だっていうくらいのレベルだが。
とりあえずクロール、平泳ぎ、バタフライで十分その感覚を味わい、背泳ぎの態勢でプカプカと浮いていた。
「お、ねーちゃん一人?俺と遊ばない?」
そんな、海に行けば必ずと言っていいほど聞くセリフを耳に入れながら。
「あの…えっと…」
…あっれー?聞き覚えのある声ダナー。
「…そぉい!」
あいつがナンパされるなんて予想Guy(byダンテさん)にもほどがあるっていう!
全力で泳いで海から上がり、真夏の太陽にほどよくなんて生ぬるい表現じゃ言い表わせないほど温められた砂浜を駆け抜ける。
「…むぅ」
しっかりナンパされてやがりました。
「あの…知り合いと来ているので…」
「えー、だってここにいないじゃん!彼が泳いでる間だけでも遊ぼうよ!」
「うぅ…」
ふむ。これはこれでなかなかおもしろいシチュエーションだがおもしろいなんて言ってる場合じゃないっていうかなんかおもしろくない(矛盾)…!
「わりぃ、泳ぎすぎちまった」
そう言いながらナンパ君を一瞥。
「…ちっ、戻ってきたか」
そう言ってそそくさと逃げるナンパ君。おまえにこいつは渡せない。
ん、なんでこんなに対抗意識を燃やしてるんだ、俺は…
「…遅い」
少し頬を膨らませながらも、安堵した表情を見せる。器用なやつだ。
「ごめんって。かき氷おごるから許してくれ」
そう言うと、パッと明るい表情に変わり、やっぱり海と言ったらかき氷だよねーとか言い始めた。現金なやつだ。
とりあえずまだナンパ君がいるかもしれないから、
「ほら」
「…ん?」
ん?じゃない。手を差し伸べてるんだから…
「だから、ほら」
「…握手握手」
…こいつは…!この瞬間天然記念物認定だ。
とりあえずチョップをガスッと決めて、握手していた手を離し、反対の手をつかんでかき氷の露店に向かった。
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