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海に到着してから早4時間。ようやく二人で泳ぐことになった。
思えばつらく険しい道程だった。
朝いきなりこいつの家に訪ねて(お隣さんだから徒歩10秒で着いたが)、『海に行くから水着を服の下に着てから出てきなさい。2分以内に』と言ったのだが、30分かけやがったアホのおでこに逆水平チョップをぶっ放し。
電車内で眠いとか言い始めやがったアホのおでこに逆水平チョップをぶっ放し。
逆に眠った俺にカバン(into読もうとしていたと思われるハードカバーの小説)で殴り付けてきたアホに『殺す気でござるか』と言いながらクロスチョップを浴びせた。
これらの、わりと力を出して放った攻撃を食らったにも関わらず、『…痛い』と言いながら少し涙目になるだけのこいつは、我慢強いのか、はたまた痛みを感じるのがステゴサウルスクラスに遅い鈍感なのか。後者だな。
そんな激しい道程をクリアして、ここに辿り着いたのだ!
「辿り着いたのだ!」
「…どこに?」
また一から説明するのが面倒というか元々脳内で考えていたことなので説明してないんだがとりあえず何も言わずにチョップを放っておこう。
「…痛い」
「そりゃチョップしたからな」
こんなやりとりをいつもしている。もはや俺のチョップは癖ではなく義務と化しているといっても過言ではなかろう。
「過言ではないよな!」
「…なにが?」
ちぇい!ずびしっ!…痛い。
もはやかぎかっこすら用いられないクラスだからな。義務だろ。うん。
「んじゃ泳ぐか」
「準備運動したらね」
「さっきかき氷屋からロッカーまでの道をダッシュで往復しただろ?大丈夫だって」
「…それだけじゃダメな気がする」
チョップの態勢に入るとサッと頭を手で覆って防御の態勢を取られたので、でこピンへとシフトチェンジした。びしっ。
「…これっていじめなんじゃないかなぁ」
そんな呟きを聞きながら、とりあえず準備運動を待ってやることにした。
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