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「…………ゴ。」
穏やかな風が肌を滑るように撫でている。
それとは対照的に、多少ではあるが、剣を含んだ声が先程から耳元で聞こえている気がした。
「…おい!ヒューゴ!」
一際大きなその声に、俺の意識が浮上覚醒していく。
「…………。」
「おい、いい加減起きろよ。ヒューゴ。」
声の主は、不躾にも俺の顔を覗きこみながら、不貞腐れに似た溜め息をこぼした。
「…シー…ザー…?」
開けた視界には、真っ赤な髪が特徴の炎の英雄付軍師、シーザーの姿があった。
英雄付軍師、という割りには若く、まだ勉強中の身だが、その才能はずば抜けていて、炎の運び手に席を置くどの軍略家もシーザーには敵わない、と思う。
だが同時に、経験浅い身で炎の運び手正軍師と認められる理由は、軍師家系シルバーバーグの名が大半を占めている。
そこは本人も自覚しているようだが…ま、俺が炎の英雄をやっているんだ、その軍師がそれぐらい若くても不思議じゃない。
「おい、ヒューゴ寝惚けてんのか?俺以外に誰がいるっていうんだ。」
シーザーは、大きな溜め息をつきながら、全くこれだから…などとブツブツ文句を言い始めた。
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