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俺は、シーザーの赤い髪が風に弄ばれている様を、小言を聞き流しながら見ていた。
赤。
俺の瞼の裏に、まだ微かに残る赤は、こんな鮮やかな赤じゃなかった。
もっと恐ろしい、赤。全てを燃やす、赤。あの日のカラヤのような、ルルが死んだあの日の光景と同じ、赤。
さっきのあれは夢ではない。
きっと…紋章の記憶…。
炎の英雄の思い、だ。
そんな事を考えていたら、いつの間にか小言を言うのを止めていたシーザーが、俺を真剣な面持ちで見つめていた。
「ヒューゴ、何があったんだ?」
シーザーは鋭い。物事の全体を見渡せる広い視界を持ちながら、僅かな変化さえも見逃さない。
それはまさに、軍師たるに相応しい才能だ。
「話してみろよ。」
シーザーの曇りのない純真な瞳が、痛い程俺を捉えている。
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