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「……………。」
俺は、シーザーの言葉に答えられずにいた。
シーザーの瞳はまだ、俺を捉えている。
「ヒューゴ…お前は俺が……軍師がいる意味を考えた事あるか?」
「……シーザー?」
ふいにシーザーが不可解な言葉を漏らした。
そのシーザーの口から漏れ出るような言葉は、段々と熱を帯び確かな言葉へと変わっていく。
「軍師は、軍師ってのは、ただ戦争で策を立てるためだけに大将の側にいる訳じゃないんだ!ヒューゴ、軍師ってのは……俺はお前のっ…!」
シーザーはその後の言葉を飲み込むようにして押し黙った。
興奮のために上気した頬は僅かに赤みを帯び、今は反らされてしまった濡れた瞳には苦渋が浮かんでいる。
「……シーザー。」
俺は今の、シーザーの叫びとも言える言葉を深く噛み締める。
軍師がいる意味。
紋章の記憶、英雄の想い。
俺の…思い。
「…もう戻ろ、ヒューゴ。」
悲しそうな眼差しを俺に向けると、シーザーはくるりと反転し背中を見せここから立ち去ろうと促した。
「……………。」
シーザーが隣に立つ意味。
それは………。
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