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「……この間、木の柵を焦がした。」
俺はシーザーの背中に向けて語りかけた。
今まで誰にも言わなかった…言えなかった事を。
「油断すると取り込まれそうなんだ。」
俺の思いを言葉が代弁する。
「…ずっと炎が燻ってるみたいで。」
それまでずっと黙って聞いていたシーザーが、盛大な溜め息を一つ吐いて俺へと向き直った。
俺へと向けた顔はどこか晴れていて、少しだけだか気が楽になったような気がする。
「……。」
シーザーは静かに先を促してくる。俺は続けて語り出した。
「…紋章の記憶が。」
「紋章の記憶?」
「ああ。」
「真の紋章に…記憶?」
俺はただ頷いた。
確かに、突拍子もなく大きな話だ。俺自身も殆んど理解していない。
一方的に感じる記憶。それを、シーザーに話せるだろうか?
「…………。」
瞬間、話すのを躊躇ってしまう。
「話してみろ、ヒューゴ。」
シーザーは穏やかに、ただし真意に諭すように言葉を発してくる。
俺にとってシーザーは軍師で、シーザーにとって俺は大将で、お互いに支えあう間柄で。
大丈夫。シーザーなら俺の言葉を聞いてくれるだろう。
俺は、意を決して大きく息を吸い込み、語り始めた。
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