一章 ー三日坊主の壁ー

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私の顔を見た友人は、片眉をあげる。 「化粧なんかして、お見合いでもあったの?」 彼女もまた、化粧は特別な日にするものだと思っている人だ。類は友を呼ぶ。 「何もないときこそ、着飾るのが女よ。」 まるで川島なおみの台詞だ。自分で言っておいて何だかこそばゆい。無論、友人も苦笑い。 「何だろ。あんたさぁ、化粧してると誰かに似てる。」 やった、気付かれた!そう思った。 チャン・ツィーを意識したのだから、似ているのはもちろんチャン・ツィーだ。友人よ、誰に似ているか思い出して、私が言う前に言っておくれ。チャン・ツィーに似ているねと! 念力が通じたのだろう。彼女は目を見開いた。 「分かった!」 「誰?」 「お稲荷さん!」 え? それって、神社とかにいる? キツネじゃん。 人ですらないじゃん。 がっかりした。両肩の骨が外れてぷらんぷらんしそうなくらい、肩を落とした。頑張って化粧して、その結果キツネは無いでしょう。假屋崎省吾からキツネって、良くなったのか悪くなったのかも分からないよ。 思わず本音がポロリと出る。 「これ、チャン・ツィー意識したんだけど。」 「え?」 「だから、チャン・ツィー」 「・・あんた、中国政府敵に回すよ。」 規模がでかい! 国単位って! あたしと先輩の目が節穴だったのかと、先日の写真を見せたのだが、それは確かにチャン・ツィーだねと言われた。 どうやら問題は、私のメイクの腕にあるみたいだ。 美人生活への道、スタートラインにすら立てず。 化粧の勉強も大変だし、やっぱり三枚目でもいいからすっぴんでいたいと思ってしまったよ。
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