食事

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  食事を目の前に出された二人は待っていましたと言わんばかりに箸を手に取ると、食器を叩き付けるようにカチャカチャと音を立てながら一気に料理を頬張っていった。 料理はみるみるうちに二人の胃袋へと消えていき、普段から早食いの直人に関しては、5分が経つか経たないかといった時点で二本目の煙草を口元にくわえて火を点けようとしている。 「なあなあ直人……お前、ちゃんと噛んでから飲み込んでいるのか? いくら腹が減ってたからって、そんなに早食いしてたんじゃあ胃腸が弱っちゃうよ? それにさあ、将来直人の奥さんになってくれる女性が一生懸命旨い料理を手間隙かけて作ってくれたって、お前がそんな風にペロリと食ってたんじゃあ、それはそれで問題になってくるとは思はないかい?」 佳佑は直人の為にと忠告したつもりだったが、直人は煙草の煙りを胸いっぱいに吸むと、天井に向かってプカプカと煙りを吐き出しながらニヤリと笑った。 「バ~カ? 旨い料理だから一気に平らげちまうに決まってんだろ? んーなにチンタラ食ってる方が、嫁さんの料理がマズイですって言ってるみたいで、よっぽど失礼って話じゃねえか?」 二人の考え方はいつも対称的で、必ずといっていいほど意見が一致しあうことはなかった。 「そんなことを心配するよりもなあ、先ずは結婚前提にお付き合いをしてくれる女性に俺達は巡り会わなくちゃあならねえんだよ。 それによ……俺達は若いけど、いつ死んじまうかなんて誰にも分からねえんだぞ? もしかすると一年後に死んじまうかもしれねえし、今夜死ぬって可能性もある。 ようするによ、将来的な出来事を今から心配したって、必ずしも思い通りになるとは限らねえって俺は言ってるんだ……」 直人は佳佑の意見にそう反論し終えると、三本目の煙草を胸元のポケットから取り出しながら、 「つーか、話は変わっちまうけどよ……俺、アパートのトイレの中で変なものを見つけちまったんだ」 自宅のトイレで見つけた手書きのカレンダーのことを話題に取り上げた。
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