食事

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      「変なものって……まさか、昭和もののアダルトビデオでも発見したとか言うんじゃないよね?」 「どあほ! んーなもん見つかるか! 俺が見つけたっていうのはなあ、カレンダー……それも、トイレの天井に直接手書きで書き込まれていたっていう、いわくつきのな!」 「……えっ? 手書きのカレンダー?」 「そう……でな、 そのカレンダーつうのがよ、ぱっと見は本物と見間違えちまうくらいに精密に書かれてたってわけよ!」 「へえ……そうなんだ? でもさあ、それって変なものっていうよりも、逆に考えると凄くないかな? だって、手書きでそこまで精密に書き込める人なんて、なかなかいないと思うよ?」 「バ~カ! 見てもない奴が適当なことを言ってんじゃねえよ!」 「えっ? でも……」 「でも……じゃねえ! いいから俺の話を最後までよく聞け! 先ず、俺が変だって言ってるのは、あんなものをトイレの天井へ書き込もうと思い立った奴の精神状態が変だって言ってるんだ! どう考えても普通じゃねえだろ?」 「まあ、そう言われると確かに普通じゃないかもね?」 「そうだろ? そんでな、もっと変だったのがよぉ…………」 直人はその後も数時間に渡って熱弁を続けた。 やがて、お店の店員から閉店時間だと聞かされた二人は、慌てて食事の勘定を済ませると店を後にした。 外に出ると辺りはどっぷりと暗闇に包まれており、それとなく吹き付けてくる風は肌寒さを感じさせた。 「とにかく……今日は手伝ってくれたお陰でマジで助かった。 まあ、また暇な日でもあれば遠慮せずに遊びに来てくれよな、相棒!」  直人は佳佑にそう言って、「じゃあ、またな!」と別れを告げて歩きはじめた。 新居のアパートへと帰宅する直人は西側の道へ──そして、最終の電車で帰る予定だった佳佑は駅へと続く東側の道へと……。
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