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それは、夕食へ出かける前に偶然見つけた手書きのカレンダーだった──とはいっても、直人は天井に取り付けられている電球を先程から見上げていたわけだから、当然そこにあるカレンダーの存在も視界に入っていたはずだった。
しかし、先程は明々と輝いている電球の存在に意識が集中していたし、手書きのカレンダーがそこへ書き込まれているということも既に認識していたので、差ほど興味がわかず、意識して見ることはなかったのだ。
だが、こうして改めて天井を見上げてみたことで、直人は、そこへ書き込まれている手書きのカレンダーの異変に漸く気づくことができた。
カレンダーの『4日』という日付の部分を、指先から滲み出した血のような液体で、丸く囲んだような印しが新たに書き加えられている。
(俺が見落としていただけなのか……いや……さっきは絶対にあんな印しなんて無かったはずだ!?)
直人は、そう自問自答を繰り返すなかで、あることに気が付いた。
(待てよ? もしもあの印しが俺の見落しなんかじゃなかったとしたら、俺と佳祐が晩飯を食いに出かけた後、誰かが勝手にこの部屋へ忍び込んだってことになるじゃねえか!? しかも、俺は帰宅後、玄関の鍵を開けてこの部屋に入って来たんだ……ってことは、ここへ忍び込んだ奴も、当然この部屋の鍵を持ってるってことになる……)
直人はそう推測するなかで、自分以外にも、この部屋の鍵を持っている人物がいたことに気が付いた。
(絶対にそうだ……間違いねえ! この部屋の合い鍵を持っていやがるのは大家だけだ!)
直人は改めて古川の存在を強く警戒し、あの大家は何かを企んでいると深く怪しんだ。
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