忍び寄る恐怖

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  だが、もしも侵入者の正体が大家だったとしても、その理由が今一理解できない。 例えば、直人の金品が目当てで忍び込んだのであれば、トイレの照明がついていることを目撃した時点で在宅中だと判断し、部屋から逃げ出すはずなのである。 だが、戸の向こう側で息を潜めている侵入者は、トイレの前から離れようという気配が全く感じられない。 つまりそれは、金品以外の目的があって忍び込んだというわけだ。 (こいつの目的は一体……) 次第に高まってゆく己の心拍数を直人は肌で感じ、気づけば言い表しようがないくらいの恐怖で心が覆われていた。 そこへ、更なる追い討ちが直人の心を大きく乱れさせる。 「……!?」 トイレの照明が消され、直人は一寸先も見えない状況に立たされた。
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