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鳥目の直人にとってこの状況は最悪だったが、そんなことで躊躇している暇などなかった。
とにかく今は侵入者が大きく行動を起こす前に、暗闇に目を慣らしておく必要がある。
(トイレの照明を消して俺の動揺を誘うつもりだったらしいが、運よく月が出ていた御蔭で盲目状態は免れることができた。 ざまーみろってーんだよ侵入者!)
直人の言葉どおり今夜の月は煌々と輝いており、個室の上隅にある小さな換気窓からは淡い光りが差し込んでいた。
その御蔭もあってか、数秒経った今では完全に暗闇に目が慣れてしまったようである。
その後、視界の自由を取り戻した直人は、個室の中をぐるりと見渡しながら武器に代わる物がないかと目を泳がせていた。
その結果、偶然にも、トイレの片隅に立てかけられていた鉄の棒のような物を直人は見つけ出すことに成功した。
太さは鉄棒くらいで、長さは約50㎝といったところである。
元は個室内にある手洗い場下に設けられた排水用のパイプだったらしく、部分的な腐食が進んでしまった為に途中から折れて外れてしまったらしい。
(……修理もしねえで、こんな所に置きっぱなしかよ?)
直人はそう思う半面、心強い武器を手に入れたようにも思えた。
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