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隙間越しとはいえ、直人は侵入者と視線を鉢合わせてしまった。
(まさか相手も覗いていやがったとは……)
結果的に相手の片目を見ただけだったので男女の判別とまではいかなかったものの、瞳孔の開き具合が異常をきたしていたことを直人は瞬時に見抜いていた。
(麻薬でもやってんのかよ?)
その答えは定かではなかったが、それよりもなにも鉄パイプを落としたことで相手に武器を所持していることがバレてしまった。
どちらにしろ、バレてしまった以上は策に頼らず戦い抜くしかない。
直人はそう決意を固めると、床に転がっている鉄パイプを拾い上げようとしゃがみ込んだ──と同時に、
シャキィー-ン!
先程の隙間から、刃渡り30㎝程の鋭利な刃物が勢いよく刺し込まれた。
「……!?」
目と鼻の先に突き立てられた出刃包丁の先端部分を直人は震えながら見つめ、改めて『死』という状況に己が直面していることを目の当たりにした。
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