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「……これで最後だよなあ?」
直人はそう言いながら頭に巻いていたタオルを外し、勢いよく肩に掛けると佳佑の様子を窺った。
すると佳佑は台所の炊事場へと歩み寄り、水道の蛇口を捻りながら、
「あぁ、取り敢えずこれで全部片付いたと思うよ……っていうか、か~な~り、疲れたんだけど?」
冗談と皮肉を交えた口ぶりでそう言って、汚れた手をゴシゴシと洗いはじめた。
確かに長年苦楽を共にしてきた親友とはいえ、ただ働きをさせてばかりでは申し訳がない。
直人は、ここから数分ほど歩いた場所に定食屋らしき建物があったことを思い出し、そこで佳佑に夕食を御馳走しようと考え、その旨を本人に伝えた。
佳佑は余程お腹を空かせていたのか、疲れを忘れたように慌ただしく身なりを整えはじめた。
だが、直人は出かける前にトイレで用を済ませておきたかったので、早々と身支度を済ませてしまっている佳佑を尻目に、先に外へ出ておくよう伝えた。
直人は玄関口から出て行く佳佑の後ろ姿を見届けると、早足にトイレへと向かいながら改めて部屋の構造を見渡した。
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