【第一章】 引っ越し

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      「なーんでこんな所にカレンダーが……って、前に住んでた奴の忘れ物だろうけど?」 直人は冗談めかすようにそう呟いた後、そのカレンダーを注意深く眺めた。 よく見るとそのカレンダーは貼付けられたものではなく、天井の壁に直接手書きで書き込まれたものだった。 「つーか……注意深く見なけりゃ本物にしか見えねえぞ、これ……」 直人の言葉どおり、天井のカレンダーは製図の図面のように精密に書き込まれている。 そのカレンダーが示している月は4月──偶然だろうが、今の時期にちょうど当てはまっていた。 いや、よくみると月だけではなく、日付や曜日まで今年のカレンダーと全く同じである。 「西暦は書かれてないから分かんねえけど……こんな偶然ってあるものなのか?」 直人の頭の中は疑問だらけになってしまったが、外で待っている佳佑の事を思い出すと、慌てて玄関口へと向かって行った。
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