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「言っとくけど、私は読心術が使えるわけじゃないからね!!客のこない貧乏居酒屋、一壺天店主の月笠 惣一(ツキガサ ソウイチ)!!」
「……一体誰に対して説明してるんですか?」
僕の質問を歯牙にもかけず、美弥子さんは席に座った。まあ、よくあることなので気にしない。ちなみに、彼女の言ったことは九割方、正しい。
僕がお通しを出すと美弥子さんは注文した。
「親父、酎ハイ一杯」
「僕はまだ25ですッッ!!」
いつものやり取り。美弥子さんは僕の歳を承知で僕のことを親父と呼ぶ。保守系国会議員の秘書は、自分よりはるかに議員が年下でも親父と呼ぶそうだが、僕は永田町のお偉いさんじゃない。
「居酒屋の店主は親父と呼ぶのが通例よ。それとも他に呼び方があるの?」
「バー風にマスター、もしくは月笠さんで」
「そう……。親父、酎ハイ」
「………はい」
…………いつものことだ。僕は言葉通り酎ハイを用意した。
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