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休み時間になり、教科書を片付けていた潤の目の前に、伊織がニコニコとしながらやってきた。 そして、手に持っていた、可愛らしいラッピングの箱を机の上に置く。 どこか嬉しそうな顔だ。 「ハッピーバースディ、潤♪」 「……‥‥‥ん?」 「ヤダ!忘れてたの?もう、感動がないなぁ!せっかくケーキ作ってきたのにぃ…」 直径15センチ程のホールショートケーキ。 プクッと頬を膨らませ、拗ねたような表情をする伊織に、彼は少し吹き出してしまった。 「伊織は、ボクよりもボクのことを知ってるね。感心したよ。」 クスクス、と肩を震わせると、ポカポカと叩いてくる。 潤は少々抵抗しつつ、笑顔を向けた。 「ありがとう、伊織。一緒に食べよう?ボク一人じゃ食べきれない。」 その一言で、顔を真っ赤にしつつ殴るのをやめた伊織は、コクッと小さく頷いた。 伊織をはじめ、クラスの女子たちにはかなりの人気があるのに、潤はまったく気付いていなかった。
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