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「お~い、来たぞ~」
――返事はない。
どうやら聞こえていないらしい。
「別にあんたの為に来てあげたんじゃないんだからねッ!」
――返事はない。
どうやら興味がないらしい。
「ねぇ、泊まる部屋がないの。一緒におねんねしよ、ね? お兄ちゃん♪」
――鍵を開ける音がした。
(脈あり!)
「は~い、今あけてあげるぞ~――って、うおぉぉお?! おっ、おまえか!! 俺を騙したな!? この俺の美しく、そして純粋なピュアハートを弄びやがったんだな!?」
玄関からはドアノブに手を掛けたまま頬を紅潮させる、わしゃわしゃの紫髪の少年が現れた。
「声で気付けよ……てかおまえ、普段からどんな幼女家に上げてんだよ……」
「っ――! ……そんな経験なくとも、男たるもの一度はそんな夢を描くものさ……。まぁさっさと上がれ」
「あぁ、狭い所ですが」
ラドの言葉に、部屋に戻ろうとした少年の顔が引きつる。
「お、お前んちじゃないだろうが……」
とことんペースを崩された少年は、口端を歪ませ、ガクガクと震える拳を必死に抑えていた。
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