友からの手紙

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この紫髪の少年の名は、エニケス=カザーロ。 彼は十年前の事件に巻き込まれてから独り身となり、それからはこの孤児院に世話になっているらしい。 こう見えても二人は親友の仲で、ラドは彼のことをエニと呼んでいる。 「ようこそ。ロリータの町へ!」 「いや、ロレッタの町だろ……てか何度やるんだよ。このやり取り」 エニケスはロリコンだ。しかも救いようの無い程に。 この町――主に孤児院には幼女が沢山いるため、彼にとっては最高の住処であるのだろう。 前に誘われて行ったことがあるのだが、エニケスは子供たちの集まる大部屋によく忍び込む。 そして年端のいかない幼女たちを眺めては、その心に癒しのエネルギーを蓄えているのだ。 ――まぁ、その行為もここの管理人である院長に、ギラギラの光るような目で監視されているのだが。 「……ところで、うちになんの用だ」 エニケスは颯爽とした表情で口を開く。 だが、 その言葉の真意が分からず、ラドは苦い顔をした。 「今はおじさんの家に世話になっているのだろう?」 「……今なんて言った?」 「ん、今はおじさんの家に世話になっているのだろう? と」 「それじゃない。その前だ!」 後の言葉などどうでもいい。問題はその前だ。 「前? ……なんの用があってうちに来たというやつか?」 「そうだ。俺はお前に呼ばれてここに来た」 「え……ちょっ、待つんだ。俺はお前なんて呼んでいないぞ?」 はぁ? と自然と眉間に皺が寄る。一体なにを言っているのだろう、この男は。 さっきの仕返しかなにかに、今度はこちらをからかっているのだろうか? 「おまえが手紙で呼んだんだろ! 何寝ぼけたこと言ってんだよ!」 早く冗談だ、と言って欲しい。 こっちはわざわざ町まで走ってやって来たのだ。 来てくれてありがとう、すまない、の一言くらいあってもいいはずだ。 だが、次にエニケスの発した言葉は、そんなラドの希望をいとも容易く打ち砕くような、 「……誰かの、イタズラじゃないか?」 衝撃的な内容だった。
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