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「イタズラ……だと」
体の力が一気に抜けるのを感じ、ラドは膝からガクッと床に倒れた。
一体誰がこんなことを……
人に恨まれるようなことをしただろうか?
――そんな心当りはない。
そもそも自分がどこに住んでいるのか知っている人間など、エニケスくらいしか思い浮かばない。
それに手紙の文章も、いかにもエニケスらしいふざけた文章だった。
あの手紙は、やはりエニケスが書いたものじゃないか?
確信とまではいかないが、それなりに自信のある回答に、ラドは己の顔を上げた。
「手紙の文章からして、あれはエニのだった。間違いない」
間違いない訳ではないのだが、ここは押す。ラドはまだエニケスが惚けているという希望を捨ててはいなかった。
「……ふむ」
エニケスはラドに背を向ける。
彼は過去を振り返るように、顎に手を当てなにかを考え始める。
しばらくすると、エニケスは振り向き、口を開いた。
「なぁ、森で月見でもやらないか」
「――――へ?」
突然の関連性のない提案に、ラドは間の抜けた声を出した。
こんな時間に森に行く?
外は既に日が沈んでいる。
ラドは嫌な予感がした。
いや、嫌な予感しかしなかった。
「何か、わかる気がするんだ」
エニケスはラドの不安をよそに、真剣に顔をしている。
「あ? そっ、そうか。なら、べっ、別にいいけど――」
(なんだこれ、あいつ絶対なにかやばいこと企んでるだろ……!)
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