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更に奥に進んだ二人は開けた場所に出た。
そこは、とても大きな湖と、その湖畔だった。
「月が……綺麗だ……」
エニケスは、空を見上げて呟いた。
月明かりが湖に反射し、辺りを異様に照らしている。
「この風景……どっかで見たような気がするんだよなぁ……」
そう言いながら、ラドは湖に近付く。
そしてしゃがむと、その中を覗き込んだ。
「蛙たちはこの中にいるのか?」
目を凝らして見るが、もちろん水の中は見えず、ただそこには反射する星空だけが映る。
――だが、次に湖に映し出されたものを見た時、ラドは驚愕した。
なんと、湖に映ったのは――こちらに刀を向けている、エニケスの姿だった。
「え……なに?」
ラドは状況が把握できず、苦笑する。
そしてその場でゆっくりと立つと、エニケスの方を振り返った。
彼は先ほど道中で浮かべていた不思議な笑みを再び浮かべていた。刀はまだこちらに向けられている。
「もういいよ。君たちじゃこの場をどうすることもできないからね。さっさと帰って、頼れる者にでもこの事を伝えるか、それとも――この場で死ね」
「お、おい……どうしちゃったんだよ!? さっきまで食い止めようとか言ってたじゃねぇか!!」
「だ~か~ら~、無理だって言ってるじゃないか。素直に言うことを聞いてね。でないとぉ、いっぱい斬っちゃうよ~?」
彼は刀に月明かりを反射させてちらつかせると、ふざけ半分にそう言った。
ラドはそれを本気と捉えたのか、鋭い目つきで彼を睨む。
「上等じゃねぇか! さっきからおかしいんだよ、お前! 俺の拳で、その目覚まさせてやる!」
ラドは拳を強く握り締めると、一気に駆け出した。
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