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「はぁ、はぁ、は、…」
「はっ、はっ、はっ、…」
少年は不規則に息を乱し、その傍らでは大型犬が規則的な呼吸をしていた。
夕方の茜色に包まれ、一人と一匹は走ることを止めた。
空と同じ色に光る川岸に佇む。
「なあ、オレ、サッカー選手になりたかったんだ。
今の走りなら、クラスでも一番になれたよな」
肩で息をし、膝に手のひらを宛てながら少年は犬を見る。
犬はただ、答えるでも頷くでもなく少年を見上げただけだ。
少年は歩きだし、川縁に立つ。
ポケットに入れていた缶コーヒーを手に、プルタブを開ける。
一口を含み、渋面を見せたまま飲み込む。
「…大人って、こんな不味いもん飲むんだ…」
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