如雨露

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晴れの日には日陰になった。 けど、吹き荒れる風の日には 少しずつこぼれていった。 風が吹いて、 得体の知れない中身はこぼれて、 いつしか、 本当に空っぽになった。 足下に出来た水たまり 悲しくて、寂しくて、切なくて。 溜まった得体の知れない何かを、 ただ眺めたんだ。 何時しか 風は無くなり、 雲は流れて、 足下の水たまりが乾いていった 分からなくなったんだ。 そして本当に、 涙の意味もなくなって、 悲しくもなくなって、 ただ嘆いて俯いていることが 一人で佇む事が、 当たり前みたいに思えた。 ずっと俯いていたから、 最後まで気付けなかったんだ。 悲しみを 寂しさを 切なさを糧に 僕と言う芽が、 小さな花を咲かせていた事に。 空っぽになった筈のバケツの中の 微かな温度に
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