プロローグ

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
春の肌寒い季節にこの海岸に鷹島涼は一人で立っていた。 時折吹く海風に首をすくめながら、ただ打ち寄せる波を見つめていた。 「やっぱ、まだ寒いな~あの頃は寒さなんて感じなかったのにな」 何度目かの海風に一人つぶやく。 (あの頃はただ海が見たいって気持ちが大きかったから) 波の音に混じって涼にはそう聞こえた。 「ハハ。無謀だったよな~」 だれもいない海岸に涼はまた問い掛ける。 (でも毎年こうして来てくれるじゃない) クスクス笑いながら雨宮玲奈がそう答えているような気がした。 「玲奈と約束したからな~二十歳になるまでずっとここにこようって」 涼はポケットから小さな貝殻を取りだし、澄んだ青い空へと高くかざした。 (そうだね) その声に対して涼は小さくうなづいた。 「今年もきたぜ…玲奈…」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!