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その日、戸山宗治は高校へと行くため、バスに乗った。
いつもなら、自転車で高校に通っていた宗治だが、その日は、丁度、自転車を修理に出していたのでなけなしの財布が軽くなるのを惜しみつつ、仕方なくバスで学校へと向かった。
車内は多少の揺れはあるものも、ゆったりとして、落ち着きのある様子だった。
乗客といえば、何処かそわそわしている様子で腕時計を睨んでいるサラリーマン男性もいれば、上等そうな着物を羽織ったお婆さんに、同じ年代くらいの男子高生や女子高生もいた。
制服からして自分と同じ高校かな? と宗治は思った。
少しして窓を眺める。窓の外は流水のように景色が流れていた。自転車や徒歩ではとても見ることの出来ないような速い流れだった。特別に速いというわけでもないが、入学して以来ずっと、この国道線十キロを自転車で走ってきた宗治にとっては何だか新鮮な気持ちになった。
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