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また、バスは直線的な道路を走っていた。
ひたすらに走っていた。
車内は不気味なほどに静かで、先ほどまで乗っていた乗客はもう降りたのか、いつの間にかにいなくなっていた。
しまった。いつの間にか乗り過ごしてしまったのか、と宗治は思う。慌てて、宗治は降りようと、降車ボタンを押す。
ボタンが赤く点灯し、甲高い電子音が車内に響くが、当分止まる気配はしなかった。
外の景色はもはや知らない場所で異質であった。
どこまでも続く田んぼ道に、辺りには小金色のススキが沢山生えていた。
バス亭は見えない。存在する気配すらしなかった。延々と田舎の風景が続いていた。
バスの速度は加速する一方だ。
また、バスは直線的な道路を走っていた。
ひたすらに走っていた。
いつになったら降りることが出来るのだろうか。
車内を見渡すと、いつ乗ったのか知れないが見知らぬ若い男性らしき人が一番後ろの座席に座っていた。その男は薄汚れた緑の作業服のようなものを着て、いかにも工場で働いている人のようだった。顔は白い布で隠されて、全く見えなかった。
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