1人が本棚に入れています
本棚に追加
田んぼとかススキとかの田舎風景は過ぎ去り、本当にそこはよく分からない景色だった。辺りは暗い林のようで、そこには発光する丸い球体やら、四角い物体やら、三角錐のような頭を持つ者が沢山見えた。
宗治はとうとう頭がパンクしそうになって、気持ちが悪くなった。
ここは一体何処なんだ。
このバスは一体何処へ向かっているんだ。
いつ止まるんだ。
バスは止まらない。止まるどころか限りなく加速していく。とうとう窓から見える風景も、物体が線となり、色が光となって、残像となった。
もはや、そこに映るものの判別がつかなくなってしまった。
車内には相変わらず、若い男と壮年の男が後ろの座席に座っていた。その目は布に隠されて見えないが、両方、宗治のことを睨んでいた。そんな気がして、それきり後ろを見ないようにした。
また、バスは直線的な道路を走っていた。
果たして、そこは道路なのかも分からないが、走っているということだけが、確かだった。
バスに乗ってからというもの、もうきっと小一時間は経つだろう。押した降車ボタンは未だ赤く点灯したままだった。
最初のコメントを投稿しよう!