新しい誕生日

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久しぶりに思い出したのは 毎日必死だったあの頃の事。 今ならこんな風にできるのに… とか。 こんな事で 笑ったり泣いたりしてたのか… とか。 考えも行動も すべてが甘くて温くて でも、まっすぐだった…。 なんだかくすぐったい。 あんなに無知で 未熟だったのに 眩しく光り輝いていた。 一点の曇りも無い まっすぐで透明な閃光を あんなに自由に放つ事… もう今では 真似すらできないのだろうか…? 少し大人になって 欲しがっていた通りの 《自由》を手に入れた。 そこでは… 瞬きをすれば 目の前には欲しいものが 全部現れるから… 手を差し出せば やさしさを掌に乗せてくれる 誰かがいたから… いつのまにか 忘れてしまっていた。 視界が霞んでも 遠くまで目を凝らし 探し続ける事。 届かなくても 手を伸ばし諦めない事。 思い出した後も 気がつかないふりをしていた。 都会のせいにして… 大人だからと決めつけて… どんどんすすけて 吸い込まれていく自分を 必死に正当化しようとしていた。 何度も 何度も 言い訳だと気付くのに その度に 心に蓋をして 乱暴に閉じ込めた。 勘違いしていた 《自由》の代償に いつのまにか 思い描いていた未来を 見失ってしまった。 一体いつから 一体どこから 目指す軌道から 遠退いてしまったのだろう…? もうわからない…。 どの方角にも 今は宛てなんか無いけど このままここには居られない。 これから行く先には 見たくもない光景が 広がっているかも。 触れるものには 幾千もの棘が生えているかも。 新しい世界に踏み出す事は 物凄く不安だ。 でも… きっと。 大切なのは 立ち止まって佇む事ではなくて 何かを探してみること。 怖くても触れてみる勇気。 …かもしれない。 あの頃を思い出して… 今更ながら 新しい自分が生まれた。
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