狼は月に憧れる

3/5
前へ
/5ページ
次へ
狼は月に向かって手を伸ばす。 けれど、その手は月に届かない。 狼は悲しくなって月に向かって吠えてみた。 「ハァ、またダメだ」 狼は、今日も手は届かなかったなと、ため息をついた。 「じゃあ、またね!」 狼はそう言って、帰っていった。 狼は帰り道で泣いていた。 「僕はこんなに好きなのになんで手は届かないんだろう」 狼は、一年前からあの崖で、月が丸く輝いているのを見てきた。 その度、月に向かって手を伸ばしていた。 何回も何回も、手を伸ばし続けてきた。 手は届かないと知らずに。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加