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『こ・う・ふ・く・す・る……』
「中国なまりの日本語で艦長、降伏すると言ってますが、どうしましょう」
『無視しろ!撃沈せよ!』
「了解。撃沈します!」
中谷は艦を少し移動しながら、スパキャビ砲をドン、ドン、ドン…と掃射した。潜水艦の船体に無数の穴があき、ハイドロフォンソナーから命乞いの叫びが聞こえ、断末魔の声と一緒に海底に沈んでいった。
『よし、よくやった。№33はどこに行ったか?』
「わかりません。逃げられました」
『よし、針路をもどせ』
「了解」
中谷は針路と速力を元に戻して、自動航行にした。
中谷は気分が悪くなりトイレにかけこみ胃の中の物をすべて吐いた。
中谷はトイレから出て野村と山下の頭を冷やすため、タオルを換えた。
野村のタオルを換えた時、野村が手を動かしタオルを払いのけ、目を少し開けた。
「私どうしたの?凄く頭が痛い」
野村は苦痛で顔をゆがめている。
「じっとしていてください。艦長みたいにまた意識不明になったら困ります」
「中谷三尉、水を少し頂戴」
「はい、水ですね。絶対に頭を動かしたらだめですよ」
「頭が痛いので動かせない」
「はい、水です」
中谷は、野村が頭を動かさないでいいようにコップを口に近づけた。野村は水を少し飲んで、また目を閉じた。
「野村二尉!」
中谷が泣きそうな声で言った。
「大丈夫。目を閉じただけ…」
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