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中谷はヘルメットを脱ぎ額の汗をぬぐった。
「とっさによく閃いたね」
「必死でしたから。水中で12本の魚雷をかわすことは出来ませんし、誰か、死、ね、な、い、んでしょう?」
「ありがとう」
野村が珍しく満面の笑みで応えた。
「このまま、爆発の音に隠れて進んで」
「了解」
12本の魚雷の爆発音が海面から海底を何回も音がこだまし中国潜水艦のソナーは役が立たない。
「これで、中国艦隊は潜水艦を空母の防御に回し、今度は対潜ヘリがうじゃうじゃやってきて、ありったけの短魚雷を撃ってくる。少し考えるから。速力を落として無音航行にして深度は50メートル」
「うー」
山下艦長が唸って目を少し開けた。
「艦長、動かないで下さい。また失神します」
中谷がシートベルトを外し、席を立ち、冷たいタオルを山下に渡した。そして頭を固定していたガムテープを剥いだ。
「頭が割れるように痛い。どこだ?」
中谷が心配でたまらない顔をして、
「中国艦隊まで20キロです。潜水艦はかわしましたが、対潜ヘリが無数くると思います。今は無音航行中です」
「解った。頭を整理する。被害と兵器の残量は?」
野村が、
「艦体被害無し。スパキャビ弾65発、魚雷5発、ハープーン3発あります」
野村が山下の方を心配して見ている。
「野村二尉、頭は回転するか?」
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