東シナ海海戦

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「普通に撃っても間違いなく打ち落とされる。あのミサイル一発、数億円するのよ、それぐらいしてもらわないと」 「来たと思ったら帰るのですから、中国人もびっくりですね。大慌てしてますね。もう一発は?」 「海面すれすれで、最初の敵艦をパスして次の敵艦に当たるようにデータ入力をした。打ち落とされる事は前提ですけどね。揺動作戦です」 「スルーですか。野村二尉は頭が痛いのでは、回転が速すぎます」 「そぉ、普通だけど」  野村が普通に応える。 「敵潜水艦は艦隊の周囲をがっちりガードしているだろう。残りは魚雷2発、長魚雷は空母攻撃用だ。残り1発で突破することになる。野村二尉どうする」  山下が野村に訊いた。 「ん…。浮かんできません」 「中谷三尉はどうだ?」 「全然、浮かびません。2発で大艦隊を相手にするのは、燃料も無いし。いったん撤退して再度攻撃すればどうですか?」  中谷はバカな応えを言って二人から無視された。 「燃料は残量5%。到達時ゼロです。後は電池です」  野村が何かを考えながら言った。 「中国艦隊は輪形陣形をとっています。空母が真ん中でその周囲を艦艇が囲んでいます。海中は潜水艦がうようよいます。当然、神経をすり減らし海中の音を聞いているでしょう。こちらが怖いのは魚雷です。当艦を撃沈するには潜水艦、対潜ヘリからの魚雷の飽和攻撃です。どれかが当たる方法をとると思います。第2次世界大戦でアメリカがUボートを沈めた方法です。もう先ほどの手は使えません。流星号の能力をフルに発揮できる海底を高速で航行し、真下から魚雷を空母に撃つ作戦が最善だと思います」  山下が何回も頷いて感心している。 「いい作戦だ。私の作戦は、向こうは流星号の最高速度を30ノットと思ってるはずだ。………」
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