東シナ海海戦

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 野村は山下の迫力に押され席を立てない。 「衝突する。衝撃に備えよ!」  山下が全速力で潜水艦を下にかわし、空母に突撃した。  画面前面に大きな鉄の塊が見える。鋼鉄をまとった傷ついた鯨が唸りをあげて逃げているようだ。  ドーンと流星号の先端が空母の横っ腹に激突し、激しい衝撃が、三人を襲う。鋼鉄が裂け艦首からハッチの手前までめり込みんでいく。空母に海水がどっと流れ込み、少しづつ空母が傾いている。 「野村二尉、大丈夫か!」  山下が野村のことが心配でたまらない顔をしている。 「何とか、魚雷よりましです」  山下が、 「中谷!スパキャビ砲に予備弾を装填しろ。このまま空母の下敷きになりたくない。野村二尉、電池は?」  気を取り直した中谷が、シートベルトを外しヘルメットを脱ぎ捨てた。予備弾を持って作戦テーブルの上に跳び乗った。  野村が、 「電池残量は8%。4分間戦闘可能」  山下が、 「機関すべて停止」  山下はすべての機関を停止した。  中谷が、天井の弾槽をおろし、予備弾を入れ替えている。  空母は度重なる攻撃で力尽き、流星号の方にさらに傾き、少しづつ沈んでいる。 「艦長、弾、装填完了!」  中谷が作戦テーブルから飛び降りた。
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