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その日、佐々木亮(ささき りょう)は列車を待っていた。
兄が起こした事件について警察に呼ばれていたからだ。
ホームには亮の他に数名がいるだけで、『田舎』と呼ぶに相応しい。
辺りも青い山々に囲まれている。
律儀にケータイの電源を切り、列車を待っていた亮は、ホームに現れた一人の女性に目を奪われた。
その女性は、こんな田舎に珍しい『金持ち』の雰囲気を醸し出している。
「すげ……」
着ているものも、身につけているものも、余り高価そうではないのだが、それでも漠然と
この人金持ちなのかな?
と思わせる身のこなしをしているのである。
亮はその女性から目が離せなくなった。かなりの時間、見つめていた気がする。
亮はハッと魂が戻るように気がついた。そして、女性から目をそらすためにまた青い山々に目を移した。
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