【第一章】一幕「初秋」

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 俺達の通っている学校は、県立のごく一般的な進学の高校だ。 俺は、じぃちゃんのとりあえず大学行っとけという言葉のとおり、大学を目指すことにした。 これといってやりたい事がある訳でもない。 それが見つかるまでは、進路に変更はなさそうだ。  夏休みも終わり、テスト期間も過ぎた初秋の九月……。 俺は言い知れぬ虚無感の中にいた。 砂耶もいる、暑苦しいが高木だっている。 全然つまらない訳じゃないのに、何故だろう……。 俺はその悩みを、とある先輩に打ち明けることにした。  午後の授業も終わり、生徒達は開放されたように帰って行く。  俺は部活動をしている。 独り暮らしの家賃はどうしてるかって? そこは心配ない。 孫に甘いのか、じぃちゃんからの仕送りで充分間に合っているからだ。  俺の所属している部活は合気道。 ちょっと、高校の部活としては珍しいかもしれない。 警察の訓練や女性の護身術などで、よく耳にするのではなかろうか。 マイナーなせいもあるのだろう。 部員はお世辞にも多いとは言えない。 そんな数少ない部員の中で、特に親しくしている先輩がいる。 多趣味で有名な副部長、伊崎先輩だ。  練習の合間、俺は部室で伊崎先輩と二人になり悩みを打ち明けることにした。
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