【第一章】一幕「初秋」

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『じゃあ私外で待ってるから』 「んあぁ、はいよ」  いつものように適当に返事をして切る。  俺は今独り暮らし。 今年高校へと進学するとき、遠いという理由で部屋を借りた。 資金を出してくれたのは、祖父で育ての親でもある弦二郎じぃちゃんだ。  俺の両親はいない。 俺が生まれてすぐに事故で二人共亡くなったらしい。 だから、親といったらじぃちゃんとばぁちゃんだ。 「ナーゥ」  急ぎもせず学校のブレザーのシャツに着替えていると、窓辺から猫の鳴き声がする。 今日もお出迎えらしい。 「よお、また留守番宜しくなっ」 そうあいさつすると、猫は開いてる隙間から入って、今まで俺の寝ていたベッドで丸くなる。  あの猫はここに越してきてからの相棒だ。 心引かれる空色の瞳に灰色と黒の縞模様の毛、その毛並は野良とも思えなかった。 名前は付けてない。 別に飼っているわけでもないし、もしかしたら飼い主がいるかもしれないだろ?  俺のベッドで日向ぼっこしている猫を横目に、無造作に置かれた食パンの袋から一切れ取り出し、口に挟む。 そして、部屋の入口にかけてある鏡で寝癖を整える。 髪は染めていない。 でも生まれつき色素が薄いのか、最近はすっかりブラウンになってしまった。 簡単に身だしなみをチェックし、ドアノブに手をかけたところで大事な物を忘れたことに気付いた。
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