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『じゃあ私外で待ってるから』
「んあぁ、はいよ」
いつものように適当に返事をして切る。
俺は今独り暮らし。
今年高校へと進学するとき、遠いという理由で部屋を借りた。
資金を出してくれたのは、祖父で育ての親でもある弦二郎じぃちゃんだ。
俺の両親はいない。
俺が生まれてすぐに事故で二人共亡くなったらしい。
だから、親といったらじぃちゃんとばぁちゃんだ。
「ナーゥ」
急ぎもせず学校のブレザーのシャツに着替えていると、窓辺から猫の鳴き声がする。
今日もお出迎えらしい。
「よお、また留守番宜しくなっ」
そうあいさつすると、猫は開いてる隙間から入って、今まで俺の寝ていたベッドで丸くなる。
あの猫はここに越してきてからの相棒だ。
心引かれる空色の瞳に灰色と黒の縞模様の毛、その毛並は野良とも思えなかった。
名前は付けてない。
別に飼っているわけでもないし、もしかしたら飼い主がいるかもしれないだろ?
俺のベッドで日向ぼっこしている猫を横目に、無造作に置かれた食パンの袋から一切れ取り出し、口に挟む。
そして、部屋の入口にかけてある鏡で寝癖を整える。
髪は染めていない。
でも生まれつき色素が薄いのか、最近はすっかりブラウンになってしまった。
簡単に身だしなみをチェックし、ドアノブに手をかけたところで大事な物を忘れたことに気付いた。
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