【第一章】一幕「初秋」

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「むっ、うう゛!かまいおいっふぁまひばっふぁんば(あっ、やべ!課題置きっ放しだったんだ)」 履きかけた靴を急いで脱ぎ、今日提出の課題を取りに戻る。 そして机に置かれていたプリントをカバンにさっさとねじ込む。 丁度、しまい終えて顔をあげようとした時だった。 『…明日だな……』 (……ん?) 不意に部屋の中から声がした。 驚いた俺は辺りを見渡す。 だが、誰もいない。 いるのは俺と…猫だけだ。 俺はじっと、猫を見つめる。 猫はというと、相変わらずベッドで丸くなっている。 気持ち良さそうに尻尾で布団をぱたぱた叩いている。  あり得ない考えを頭に浮かべていた俺は、そんな猫の姿を見て現実にかえり、ため息をつく。 「はぁ……はは、まさかな……」 空耳だったのだろうか……。 『悠くーん!まぁだぁ?』  窓の外から砂耶の催促の声が聞こえる。 あまり待たすのも砂耶に悪い。 俺はさっさと部屋を出て半分残ってるパンを口の中に押し込んだ。
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