【第一章】一幕「初秋」

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 俺の住んでるのは木造のアパート、そして一階の出入口近くだ。 ここのアパートは砂耶の両親が大家をしている。 じぃちゃんが砂耶の親父と仲が良く、俺の独り暮らしに心良く部屋を貸してくれた。  外に出ると、もう九月だというのに今はまだ夏だ、と朝っぱらから照り付ける太陽が主張していた。 「やっと来たぁ……」  隣で朝からパワーを使い果たしたような声がする。 「今日はまだ始まったばっかだぞ、砂耶」 ハンカチでぱたぱた仰いで砂耶はそこにいた。 茶色く染めた肩まで伸びる髪を、二つに束ねているごく普通の女子高生だ。 「悠君のせいだよ~。こんな暑い中、女の子を外で待たすなんてぇ……」 「外で待ってるって言ったの、誰だっけ?」 「うっ…んも~、悠君の意地悪ぅ……」 「あははは、ごめんごめん。ほら行くぞ」  砂耶とは毎日こんなもんである。 少し天然なのか、いじると色々な反応があって楽しい。  毎朝、俺は砂耶と駅までの道のりを一緒に歩いている。 砂耶と俺の住むアパートは、近代の住宅地と離れているために駅までほとんど他の生徒に遭わない。 そこっ、羨ましいとか言わない! 砂耶は、俺にとって妹のような存在だ。 幼い頃から一緒に遊び、よく泣く砂耶を慰めていたものだ。 ……砂耶自身は、俺の事をどう思っているのだろう? 少し気になる。 「なあ、砂…」 「ああっ!」 何か思い出したのか、急に立ち止まる砂耶。 「何?急に……」 「悠君、課題は!?」 「はぁ…」 (なんだ、その事か……) 「ああ、持ってきたよ……ほら」 そう言って、砂耶に俺のカバンの中を見せる。
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